今は無き、夜間電力利用の電気蓄熱式全館暖房システムのメーカー『エナーテック株式会社』の元社員が少々の心残りを感じてブログを立ち上げてみました。

2017年1月28日土曜日

ウェルエコ 一部のパネルヒーターしか温まらない時

このブログから問い合わせをいただきました。

『一部のパネルヒーターが温まらなくなってしまった』という現象です。
原因としてはいくつか考えられます。

疑ってみる場所は

①システム圧
②温まらないパネルヒーターのエア溜まり
③パネルヒーター足元のサーモバルブ

というところでしょうか。

①のシステム圧は以前の記事でも書いたようにシステムのどこかにある圧力計を確認してください。単位が『MPa』(メガパスカル)とか書いてあるものが多いと思います。
このシステム圧が標準の0.1MPaからかなり低くなってしまうと温水のまわりにくいパネルヒーターほど温まらなくなります。配管が長かったり曲がる箇所が多いなどの要因で配管の抵抗が大きく、せっかくの温水がまわっていけないケースがよくあります。
その場合はシステム内に給水して圧力を上げてください。

②エア溜まりの場合はマイナスドライバーやモンキーレンチなど工具をご用意ください。(メーカーにより必要工具は異なります)
温まらないパネルヒーターの右上か左上にエア抜き用の部品がついているはずです。それをゆっくり緩めてもらうと、エアが溜まっている場合には「シューっ」という音がして抜けます。

③パネルヒーターのサーモバルブの場合は、ほとんどの場合に部品交換が必要になります。
ただしパネルヒーターはエナーテック製ではないので、メーカーや工事店に連絡し対処をお願いしてください。


以上の3点をためしてみると解決も早いと思います。



ちなみに、パネルヒーターのエア抜きをした時に少量ですがシステム内の水が出てきます。
それが真っ黒なので驚いてしまう方が多いのですが、実はそれで良いのです。

ウェルエコ本体は鉄で出来ています。
その中に建物の施工が終わる直前くらいのタイミングで普通の水道水を満たすのですが、当然鉄ですから錆びます。その時に一時的に中の水は錆びが混じって赤い色をしています。
ところが何度もウェルエコを沸かしあげているうちに、水道水に混じっていた酸素や塩素が分離され気体となってエア抜き弁より出ていきます。
すると徐々に水に混じっていた赤錆が黒錆に変わってきます。
これが黒い水の原因です。決して不具合ではありません。
むしろボイラーに余計な穴などが無い証明のようなものなので、安心して使ってくださいね。

2016年12月25日日曜日

換気システム『Ena換気』 家庭用ヒートポンプシステム『エナフル』 業務用ヒートポンプ『エナパワー』

これらのシステム・・・東日本大震災以後、業績が徐々に悪化してきていたエナーテックが起死回生を狙って販売にこぎつけたシステムでした。

どこかのメーカーのOEM製品でしたら不具合のあった時の対処を相談できたのですが、実はこれらの製品は自社開発です。

当時、エナーテックには開発部というものがあり、そこで技術者達が社長の号令の元に必死でかたちにしました。それなりに独自性を持って開発していたんだと思います。

つまり何が言いたいか・・・不具合を起こした時に治せる者が存在しません。

私は営業でしたので製品の心臓部分の技術に触れる事はありませんでした。また、恐らく開発部にいた技術者も当時の資料や機材が無いと対処のしようがないと思います。

制御系の基盤の故障などでしたら外注でしたのでなんとかなるかもしれません。

以前に記載したネイビープラスさんに相談してみてください。


『スラブヒーター使ってるんだけど寒いんだけど!』というクレームの時②

調べてみて、どうもコントローラーの不良ではない。床下も温まっている。
それなのにリビングが寒い・・・そんなケースのクレームの対処をしたことも何度かあります。
同様のクレームを受けた方も少なくないのではないでしょうか?

その建物はリビング階段になっていませんか?

スラブヒーターは床下の土間コンクリートをほぼ均一に30~40℃程度にあたため、面で建物を温める暖房です。その為、断熱的には一番不利な窓際で発生する冷気で窓際の床を冷やされてしまう事を防ぐためガラリをつけています。

ところがリビングに直接階段が接続しているリビング階段の建物の場合、2階を暖房していないと建物全体で見た時に下に暖かい空気があり、上に冷たい空気があるという物理的に不自然なかたちになります。当然、暖かい空気は2階に上がろうとしますし、冷たい空気は下りてきます。
1階と2階をつなぐところ、つまり階段の足元を2階の冷気が流れ落ちてくる現象が起こります。

リビングの上が吹き抜けになっていて2階部分も遮る物のない空間、なおかつリビング階段の場合じつにスムーズに空気の移動が起こるので更にリビングが温まらないことになります。
(1階で空気が多少温まる→軽くなるので2階に向けて上がっていく→2階は寒いので冷やされる→重くなるので下りやすいところから下りていく→階段を通って1階に戻る)

お施主様はリビングを暖かくしたいので、スラブヒーターの設定をどんどん上げたり、リビングでエアコンなど他の暖房器具と併用したりされた方が多くいました。


対処としては1階と2階の温度差を小さくする事です。
なので、階段を上がったところにある廊下などのスペースを他の熱源で温める事で緩和する事が出来ます。

もしもサーモカメラをお持ちでしたら、是非撮影してみてください。

自然対流は身体に感じにくいので、視覚的に見ていただくのが一番です。



2016年3月6日日曜日

スラブヒーターでブレーカーが落ちた時

まれに「寒いんです」というクレームを受けてお客様宅に伺うとブレーカーが落ちていた…なんてケースがありました。

エナーテックで製造していたコンクリート埋設専用の『スラブヒーター』は20年以上の販売期間の間に相当の改良を重ねて製造していました。交換のきかない住宅の基礎に埋設するヒーターですから、頻繁に絶縁不良をおこすようなものを販売していたら即会社の存続問題だったので当然です。
なので『スラブヒーター』自体はコンクリートに直接埋設しても差し支えのない製品だったのだろうと、社員ではなくなった今でも思います。

ただ、何らかの影響でスラブヒーターの絶縁が悪くなってしまったお客様のお宅は現実的にはありました。


対処法です。



スラブヒーターの施工に関わった方でしたら一度は見たことがある画像だと思います。
ピンク色が5時間通電型、薄緑が8時間マイコン型の資料です。

このマニュアルの通りの施工になっていれば、スラブヒーターに絶縁不良が起こった場合、落ちるブレーカーは各回路の子ブレーカーのELBだと思います。(それぞれの『2.電源』の系統図のELB(30A)と描いてある部分です)


ブレーカーが落ちてしまうなど、電気的なトラブルの場合はまずは施工がマニュアル通りになっているか確認してください。


夜間電力蓄熱機器の場合、使用するケーブルの径やブレーカー容量などは『電気容量の1.25倍に耐えられるものにする』というような記述が「内線規定」に記載されています。
なので例えば、ヒーター敷設図を確認した際にその回路のヒーター容量が3.5kwだったけどELBに20Aが使用されている…これは基本的にはアウトのはずです。ただ、各電力会社さんの判断やそのお宅の状況によって、適切な判断の元でそうなっている場合も無いとは言えません。ご心配な場合は担当の電力会社で確認してみてください。


次にブレーカーが落ちてしまう回路の絶縁抵抗値をメガーで計測します。
この段階ではコントローラーの前面パネルを開け、該当回路のヒーターに繋がるVVF2.6を端子から外して計測してください。

絶縁が悪い事が確認出来た場合、床下に潜り該当回路のジョイントボックスを探します。



ジョイントボックスの中の結線部を外し、今度は各ヒーター一本一本の絶縁を計ります。

絶縁不良を起こしているヒーターが特定出来たら、そのヒーター以外を再度元のようにジョイントし直してください。


これで不良ヒーターのみ切り離すことで、回路自体は生かすことができます。


スラブヒーターのシステムは、1つの『主幹のサーキットブレーカー』に回路の数だけある分岐の子ブレーカー(ELB)があり、そのそれぞれに複数のヒーターがぶら下がる配線系統になるので、どれか1つのヒーターが絶縁不良を起こすだけでその回路の他のヒーターまでELBで遮断されてしまいます。すくなくとも上に書いた対処をする事で、正常なヒーターは生かすことができます。

まれに主幹の方にELBを使用し、子ブレーカーにサーキットという現場を見ましたが、その配線ですと1つのヒーターがダメになっただけで家じゅう全部のヒーターが止まります。色々事情があったんだとは思いますが、その場合は特に対処を早めにお願いします。



本来でしたら不良を起こして電気的には切り離したヒーターを何とかしたいところですが、コンクリートに埋設してあるものなので交換はできません。


エナーテック時代の対処は、不良ヒーターが埋まっている部分のコンクリート表面に同じ型番のヒーターを並べ、モルタル等を50mm程度かぶせて埋設して配線だけ繋ぎ換えていました。

スラブヒーターと同じような使い方が出来るヒーターが他に存在するのか僕は今のところ知りませんが、もしもそんなものが手に入るとすれば同じ対応が出来るかもしれません。












2016年3月5日土曜日

スラブヒーターコントローラーの点検ランプ点灯③

スラブヒーターの点検ランプの点灯の原因はいくつかあるという事は以前の記事に書きました。
主には以下の3つです。


・温度センサーの不良
・基盤の不良
・過昇


今回は3つ目の『過昇』で点灯している場合です。


1部屋だけなぜかとても熱い、床下の温度を計ってみると1回路だけありえない温度だった…なんて事がまれにありました。


正常な状態であれば、温度調節範囲はEACコントローラーで0~50℃、EMCコントローラーで0~40℃です。
それがEACの場合55℃、EMCの場合45℃を感知すると点検ランプが点灯します。


では、なぜ必要以上にコンクリートが熱くなるのか…。



最初に可能性として調べてほしいのは『回路ごとの配線の繋ぎこみが入れ違ってはいないだろうか?』です。


例えば床下で、本来はA回路のセンサー保護管に挿入されるはずの温度センサーがB回路の保護管に入っている。B回路のセンサーがA回路の保護管に入っている…という状況の場合です。

この場合、温めている回路とは違うところの温度を検知している状況なので当然動作はおかしな事になります。




配線の間違いが無い事が確認できた場合、恐らくは基盤不良だと思います。
特に他回路にも冷たいものは無いのに、1回路だけ熱くなってしまっている場合は十中八九間違いないです。

これは基盤に組み込まれているリレーの中で接点不良を起こしており、電気が常にヒーターに強制的に送られてしまう状態になると起こります。

EACコントローラーの場合、電力会社のタイムスイッチによって夜間の1:00~6:00しか電気が来ないので、仮に基盤の接点不良が起こってもコンクリートが熱くなる程まではほとんどの場合いきません。
ところがEMCコントローラーの場合、通電のオンオフはコントローラーで行っているので接点不良が起こると24時間ずっと温め続けることになります。


これが確認出来たら、基盤交換をしなくてはなりません。


このブログにも書きましたが、ネイビープラスの高橋さんという方に連絡をとり基盤を仕入れてください。

2016年3月4日金曜日

ウェルエコのメンテナンス⑥

ボイラーの沸き上げ温度に異常がある場合、温度調節器の不良の可能性があります。

この温度調節器はウェルエコ正面の扉を開いて右上にある黒ダイヤルのついた部品です。


この温度調節器には、ボイラー内の温度を感知するセンサーが繋がっていて扉の下のセンサー口に挿入されています。


上の画像の青丸部分がセンサー口です。
ウェルエコはこの位置の温度を感知して沸き上げ温度の調節をしています。



交換方法です。


まずは上の画像の緑丸部分の温度調節器に繋がっている2つの端子を外します。
少し力を使いますが、工具など無しで手で外れるはずです。

そしてダイヤルの左右にある2つのビスを外してください。

あとは先ほどのセンサー口に挿入されているセンサーを手で引き抜いてもらえば固定されている部分は無くなるので、比較的簡単に外せます。



新しい温度調節器を逆の手順で取り付けたら完了です。







2016年2月28日日曜日

ウェルエコのメンテナンス⑤

ブレーカーも落ちていない、低水位でもなさそうだ…でも湧き上がらない。

そんな時は電力会社さんに強制通電をお願いしてください。

まれに、ほんとうに極まれにですが電力会社さん支給のタイムスイッチやマグネットスイッチが不具合を起こしている事があります。



上の画像でいうと

赤丸 → タイムスイッチ(デジタル式のものもあります)
青丸 → マグネットスイッチ
緑丸 → 整流器(CT)


この辺が、たまにウェルエコの湧きあがらない原因になっていました。


電力会社さんによっても対応は違うかもしれませんが、私の管轄エリアの電力会社さんではマグネットスイッチのこの大きさのものは普段は在庫していないそうで、受注生産品なので納期がかかってしまうと言われた事がありました。なので、電力会社さんへの連絡は早い方がよいです。

ただ、納期がかかってしまうからといってそれまで待っているわけにもいきません。私の経験では、その場合ではマグネットスイッチおよびタイムスイッチを一時的に使わない繋ぎこみ(つまり24時間電気が送られ続ける)をしてくれました。


ウェルエコボイラーが正常に機能している限り、湧きあげ温度まで上げたらボイラー自体の制御で通電を止め、再度5℃程度下がったら再通電するという稼働を繰り返すだけで、基本的には給湯と暖房で使用した分以上に電気料金がかかってしまうような事はありません。電力会社さんの工事を待っていただいて大丈夫です。